お役立ち情報
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 非正規社員の就業規則は作成しないと違法なのか
 パートタイマー、嘱託、アルバイトなどの非正規社員の労働条件(賃金、勤務日数・勤務時間および休日、有給休暇の付与日数、休職制度の有無など)は、正社員と異なるのが一般的です。 そのため、非正規社員に対して、正社員と同じ就業規則を適用する企業は少ないはずです。
 そのような企業の正社員就業規則には、「この規則は、 期間の定めのない労働契約を締結している社員に適用する。 ただし、パートタイマー、嘱託、アルバイトの就業に関する事項については、別に定めるところによる。」といった適用範囲の定めがあって、正社員と非正規社員の労働条件を区別しています。
 「別の定め」といっても、非正規社員が少数の事業所や小規模事業所では、非正規社員に対し労働契約書を取り交わすのみで、非正規社員用の就業規則を別に作成している企業はさほど多くはないようです。 
 しかし、常時10人以上の労働者を使用する場合は、就業規則を作成して行政官庁へ届出しなければならず(労基法第89条)、「一部の労働者を就業規則の適用から除外しながら、それら労働者の別規程を作成していない場合には、作成義務違反が成立する。」(菅野労働法第10版 128頁)と解されています。
 したがって、就業規則の作成義務のある事業所については、労働契約書の手交に加えて、当該事業所で使用する労働者すべてに適用される就業規則(別規程を含む)を作成しなければなりません。


 

 非正規社員の就業規則を作成しない企業が陥る落とし穴とは
 ところで、就業規則の基準より下回る労働条件を労働契約書に定めた場合には、その部分は無効となって就業規則で定める基準で労働契約を締結したものとしてみなされます(労働契約法第12条)。
 例えば、パートタイマー用の就業規則を作成していない事業所において、パートタイマーと労働契約を締結するときに「賞与は支給しない」と労働契約書に定めて双方が合意したとしても、正社員用の就業規則に賞与を支給する旨の定めがある場合には、当該労働契約のその部分は無効となって賞与を支給しなければならない事態に陥る可能性があります。
 判例でも、本工たる「社員」に対する就業規則のみがあって、「日雇い」に対する就業規則が制定されていない場合について、「社員就業規則を日雇いに準用すべきである。」(日本ビクター事件 S41.5.27 横浜地裁)と判示したものがあります。

 また、平成25年4月1日施行の改正労働契約法により、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、有期労働契約者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換できる「無期転換ルール」が適用されることになりました(労働契約法第18条)。
 この「無期転換ルール」は使用者にとって非情なもので、法定の要件を満たしていれば使用者の意思に拘わらず、有期労働契約者が当該無期転換の申込みをした時点において、期間の定めのない労働契約が成立してしまうというものです。
 無期労働契約が成立した後の労働条件は、特段の定めがない限り、無期転換の申込みをした時点の有期労働契約と同一となります。ただし、無期労働契約に転換した社員用の就業規則がなければ、前述のパートタイマーの例示と同様に、正社員の就業規則に定める労働条件が適用されてしまう事態も考えられます。
 労働契約法第12条は、強行的・直律的効力を有すると解されているため、労働契約と就業規則の関係性や取り扱いについては相当の留意を要します。
 なお、「無期転換ルール」に係る問題については、当該労働条件の取り扱いを含め、今後の裁判所の判断が注目されるところです。


 

 労働者全員に適用される就業規則の作成と適用範囲の明確化
 このように非正規社員用に適用される就業規則を作成していない場合には、労基法違反だけではなく、労働契約に係る問題に及ぶことがあります。企業にとっては労基法違反より深刻な問題に発展することが想定される上、この問題は労働者が常時10人未満の事業所であっても同じように起こり得ます。
 上述のような事態を避けるためには、正社員のみならず、その事業場で使用するすべての労働者に適用される就業規則を整備しておくことが肝要です。小規模な事業所であっても、実務的には雇用形態ごとに別規程を作成することが望ましいでしょう。
 また、別規程を定める場合には、各規程ごとに適用範囲(対象者)を明確に定めておきましょう。


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文書作成日:2013/04/22

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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