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就業規則活用のヒント《懲戒編》

就業規則活用のヒント《懲戒編》 


 懲戒を行うための要件とは
 懲戒処分とは、企業のルールや秩序に違反した従業員の対して行う制裁のことです(懲戒と制裁は同義語)。
 判例では、「使用者は労働契約を締結したことによって企業秩序遵守義務を負い、使用者は労働者の企業秩序違反行為に対して制裁罰として懲戒を課すことができる。」(関西電力事件 S58.9.8最小判)との対場をとっており、懲戒は一般企業において広く認知されているところです。
 一方で、使用者の懲戒権の行使については、「(略)・・・客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」(労働契約法第15条)としており、従業員側の情状や使用者側の対応等を考慮するよう、制約を付けています。
 それでは、権利の濫用か否かは、どのように判断されるのでしょうか。
 少々堅苦しい話しですが、使用者が懲戒処分を行うためには、刑法等の一般原則を適用して、@罪刑法定主義の原則、A一事不再理の原則、B処分不遡及の原則、C処分平等の原則、D処分相当性の原則、E適正手続きの原則、といった要件を満たすことが必要であると考えられています。
 就業規則に懲戒を定めるとき、または懲戒を課すに当たっては、上記の原則を理解しておく必要があるでしょう。


 

 就業規則に定めのない懲戒は無効なのか
 「罪刑法定主義の原則」とは、「どのような行為に対して、どのような罰が課せられるのかが、あらかじめ法律により定められていなければ処罰できない」というものです。
 これを懲戒にあてはめると、懲戒の対象となる行為や懲戒の内容などについては、あらかじめ就業規則に定めておかなければ、懲戒権を行使することはできないということになります。
 また、懲戒の定めをする場合には、必ずその種類及び程度を就業規則に記載しなければならず(労働基準法89条第9号)、就業規則がその拘束力を生じるためには、その内容を従業員に周知することを要する(フジ興産事件 H15.10.10最大判など)としています。

 問題を起こした従業員に対して、懲戒を課すことができなければ職場の規律を保てないばかりか、従業員のモラールを低下させ、やる気のある優秀な従業員が会社を辞めてしまうというな事態を引き起こしかねません。 使用者が、企業秩序維持のために懲戒権を行使するためには、懲戒規定の定めは必須といえるでしょう。


 

 実務上知っておきたいその他の要件
 「罪刑法定主義の原則」以外の要件についても、懲戒を実施する上で重要な事項ですので、ポイントを確認しておきましょう。

一事不再理の原則
 「一事不再理の原則」とは、ひとつの行為に対して重ねて罰を課すことはできないというものです。
 例えば、非違行為を行った従業員に対し、けん責処分を課した後、更に減給に処するようなことは許されません。
 但し、従業員が懲戒の後に非違行為を繰り返した場合には、その後の行為に対する懲戒まで禁止するものではありません。
 なお、非違行為を行った従業員に対し、出勤停止を命じた後に懲戒を課す場合には、その出勤停止自体が懲戒処分なのか、処分を決定するまでの調査等を目的としたものなのか、予め明確にしておく必要があるでしょう(前者の場合は二重処分に該当しますが、後者は該当しないと考えられています。)。

処分不遡及の原則
 「処分不遡及の原則」とは、懲戒は非違行為があった時点に行うものであって、過去に遡って行うことはできないというものです。
 例えば、就業規則に懲戒の定めがない企業において、従業員が非違行為を行った後に懲戒規定を定めたとしても、この懲戒規定に基づいて、当該従業員に対し懲戒を課すようなことは許されないということです。仮に、懲戒の定めがないまま懲戒に処すれば、「罪刑法定主義の原則」に反することになります。

処分平等の原則
 「処分平等の原則」とは、同じ程度の非違行為に対する処分は、同一種類・同一程度でなければならないというものです。
 例えば、繰り返し遅刻をした従業員が「けん責」処分だったにもかかわらず、別の従業員が遅刻を数回しただけで「減給」に処するようなことは、処分の平等性に反することになります。

処分相当性の原則
 「処分相当性の原則」とは、処分の対象となる「行為」と処分の「重さ」に、バランスの保持が求められるというものです。
 例えば、遅刻1回という行為に対し、懲戒解雇という極めて重い処分を課した場合には、処分相当とはいえずに権利の濫用で無効になると考えられます。

適正手続きの原則
 「適正手続きの原則」とは、例えば、懲戒処分の決定に当たっては、事実関係を調査・確認し、懲戒委員会等において、
非違行為の悪質性や影響度などを公正に検討するなどといった、適正な手続きが求められるというものです。
 また重大な懲戒に処する場合には、本人の情状や上司の対応等も考慮されるべきで、少なくとも本人の弁明の機会を与えることが必要と考えられています。



続きはこちら >>> 『就業規則活用のヒント《懲戒編A》』


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文書作成日:2011/05/16

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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