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就業規則活用のヒント《役割編》

就業規則活用のヒント《役割編》


 就業規則の役割
 中小零細企業では、就業規則に関する誤解や認識不足などが相俟って、まだ就業規則が作成されていない、または就業規則はあるが十分に活用されていない企業が少なくないかと思います。
 就業規則には従業員の労働条件や職場における規律などが定められることが、一般に知られていますが、就業規則にはそもそもどのような機能を有しており、どのような活用意義があるのでしょうか。
 就業規則が有する役割の内、経営者にとって重要な役割について確認したいと思います。



 労働契約の補充効果
 企業は従業員に対して、労働時間や賃金などの基本的な「労働条件」を明示する義務があります(労働基準法第15条)。
 労働条件とは、企業と従業員との権利義務に関する事項、つまり従業員が企業で働く上での約束事ですから、非常に重要な事項といえます。
 労働条件は、本来は企業と従業員との個別契約に関する事項ですが、労働時間、休日、休暇、退職に関する事項などの多くの労働条件は、企業という集団的性格上、画一的に設定されることが殆どであって、その詳細を従業員ごとに定めることは効率的ではありません。
 しかし、「合理的な労働条件」を定める就業規則を、「従業員に周知」したときには、その就業規則に定める労働条件は、労働契約の内容とすることができます(労働契約法第7条)。
 つまり、労働条件を統一的に設定した就業規則には、労働契約の内容を補充する効果が期待できるのです。
 但し、個別の労働契約において就業規則を上回る労働条件に合意していたときには、その部分については労働契約が優先される(労働契約法第7条但し書き、同法第12条)ので注意が必要です。



 企業秩序の維持のために
 職場の秩序維持や健全な職場風土の醸成するためには、従業員が遵守すべき規則・規律、行動指針などを明示して、企業が有する指導・命令等の権限に関する事項や秩序違反したときの罰則などを就業規則に定めておくことが、正常な事業を運営していくうえで重要な意味を持ちます。
 近年は、企業の内部統制を図ることを目的に、就業規則に経営理念、経営方針、社訓などを掲載して、経営目標の共有化や労使コミュニケーションのバックボーンとして活用する企業が増えています。
 職場規律等を明文化することは、少なくとも企業秩序を維持する上で欠かすことのできない事項といえるです。



 労働契約に内在する権利と義務
 ところで、労働契約は、@従業員が企業に対して負う「労働提供義務」、A企業が従業員に対して負う「賃金支払義務」の2つの基本的な義務関係によって成立するとともに、企業には、労働契約上の固有の権利として「指揮命令権」を有すると考えられています。
 一方、従業員には労働の提供に当たって、「職務専念義務」、「職場規律の維持・企業秩序の遵守義務」、「企業の利益を不当に侵害しない誠実義務」などの付随義務が課せられると一般に認められています。

 なお、企業が有する指揮命令権の行使は、無制約にできるというわけではありません。従業員に著しい不利益を与える場合や違法または不当な目的の場合などについては、権利の濫用として認められません(労働契約法第3条第5項)。
 また、就業規則に明文化されていない事項については、企業はその権利を行使することができない場合があります。
 指揮命令に関する事項については、就業規則の定めの有無、要否および定める内容について、あらかじめ確認しておきましょう。



 使用者権限を活かすために
 さて前述のとおり、一定の要件を満たすことにより、就業規則に定める労働条件は、労働契約の内容となります。
 労働契約は企業と従業員の合意によって成立(労働契約法第6条)しますが、労働条件を定める就業規則は、そもそも企業が作成するものです。
 労働条件の内容に関しては、企業に課せられる労働法上の義務が多いものの、合理的な労働条件を従業員に周知している限り、労働契約の内容として有効なのですから、経営者としてはこの効力を最大限に活用したいものです。

 なお、従業員が常時10人未満の企業には、就業規則の作成・届出等の義務はありませんが、従業員に周知する就業規則については、労働契約法上の就業規則と解するとされており、労働契約の補充効果が生じると考えられています。
 仮に就業規則がない企業についても、労働基準法をはじめとした法律上の義務が当然に課せられています。それならば企業規模にかかわらず、経営者は経営メリットを高めるべく、就業規則を整備して大いに活用すべきでしょう。
 経営者の皆様には、就業規則に労働条件や職場規律等に関する事項をしっかりと明文化していただいて、健全な職場環境の構築や改善に役立てていただきたいものです。


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文書作成日:2011/04/25

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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